
[レポート]ガスタービン燃焼用空気の完全蒸発水噴霧システムの確立について
工場は「熱」と戦いの最前線にある。夏の気温上昇により発生するデマンドピーク、設備加熱による機器の停止、空調能力の限界運転などは、生産効率低下に直結する。多くの現場ではファンを増設し、チラーをフル稼働させて「熱」を抑え込もうとしている。気候変動や地球温暖化によって気温が上昇し、エネルギーコストも上昇する昨今、この力技での冷却は限界に近い。
解決策の鍵となるのが、物質の「相変化」(状態変化)を利用した潜熱による冷却である。
本稿では、「顕熱冷却」と「潜熱冷却」を比較し、霧を用いた「潜熱冷却」が工場における最適解となり得るのか解説する。
工場における冷却システムの主力は熱交換器であり、多くは顕熱を利用している。顕熱とは、物質の状態(相)を変えずに温度だけを変化させる熱のことである。
フィン&チューブ型の熱交換器(エアフィンクーラー)を例にしてみよう。熱交換器内を流れる流体の熱を外気(空気)に移し、流体が冷やされる。流体や外気の状態は変化せず、両者の温度のみが変化する。温度差を利用して熱が移動する方法だ。
しかし、この方法では、流体の温度を外気温度以下に下げることはできない。例えば、夏場の外気温(乾球温度)が35℃の場合、どれだけ強力なファンで外気を送り込んでも流体温度が35℃以下にはならない。地球温暖化や気候変動にて外気温度が上昇している現在、外気との温度差に依存する顕熱による冷却方法は限界を迎えようとしている。
潜熱は、温度を変えずに物質の状態を変える「相変化」のために使われる熱量のことである。常温気化を前提にすると、液体が気体に変化するときに周囲から奪う熱(気化熱)といえる。
| 熱 | 変化 | 条件 | 熱量 |
|---|---|---|---|
| 顕熱 | 温度変化 | 水1gを1℃温度変化させるために必要な熱量 | 1 cal(約4.2 J) |
| 潜熱 | 相変化 | 水1gが常温で蒸発するとき周囲から奪う熱量 | 約580 cal(約2,400 J) |
両者の熱量の差は非常に大きい。1滴の水が蒸発するとき、温度を1度下げる場合の約580倍の熱量を周囲から奪い取るのである。大量の空気や水を循環させ、温度差を利用して冷やすのではなく、少量の水を蒸発(相変化)させるだけで、桁違いの熱量を処理できることになる。しかも蒸発による冷却は、湿球温度まで温度を下げることが可能である。
「顕熱」の限界を「潜熱」で突破する技術が、いけうちの提唱する「霧」を用いた冷却ソリューションである。
潜熱を利用した冷却システムはすでに存在する。その例が冷却塔(クーリングタワー)である。塔内で散水して滴り落ちる水の蒸発により冷却している。しかし、同じ原理を工場の空間冷却に転用するには無理がある。その理由は、工場設備への濡れの悪影響だ。精密機械や電気設備が濡れれば、故障や漏電のリスクに直結する。つまり、工場では濡らさずに冷却しなければならない。
ここで重要なのが、「濡らさずに、蒸発させる」技術だ。水は塊の状態(液膜)では表面積が小さく、蒸発に時間がかかる。蒸発しきれなかった水は「濡れ」として残り、トラブルの原因となる。
解決策は、水の微細な粒子である「霧」である。なぜなら、霧の粒子の大きさが決定的に重要だからだ。1滴の水を微細化し、直径を10分の1にすると、同じ水量のまま表面積は10倍になる。さらに細かくすれば、直径に反比例し表面積は増大する。同じ水量で表面積が増えれば増えるほど、空気との接触面積が増え、蒸発速度は加速する。
この原理を実現するため、いけうちの流体技術を用いて、水の粒子径をミクロン単位で精密に制御し、冷却をおこなう。この制御こそが、いけうちの技術の核心だ。

霧による冷却には、2つの方式がある。対象物に到達する前に蒸発して空気を冷やす「冷房冷却」と、対象物の表面に触れた瞬間に蒸発して熱を奪う「接触冷却」である。
いけうちの技術は、熱を奪う仕事だけを終えて消える霧を作り出し、水浸しにしないようにする。これが、単なる散水ノズルとは一線を画す、エンジニアリングされたいけうちの「霧」だ。このように、いけうちは、ノズル内部の流体の流れを考慮し霧の粒子径をミクロン単位で制御することで「濡れない冷却」を実現した。この技術により、工場の精密機械や電気設備を守りながら、効率的な冷却が可能になった。だからこそ、いけうちは「霧のいけうち」と呼ばれる。
いけうちの霧による冷却システムの優位性は、技術面だけではない。省エネと費用対効果の観点からも、その価値が明らかだ。
工場の熱除去の手段としてチラー(冷水機)がある。チラーは強力な冷却システムであるが、冷媒コンプレッサーの稼働に多大な電力を必要とする。一方、霧による冷却システムの場合、必要な動力は加圧ポンプのみだ。その理由は、熱を奪う仕事をしているのはモーターではなく、水の蒸発で発生する気化熱だからである。
この違いが、エネルギー効率に大きな差を生む。同じ熱量を処理するために投入するエネルギーは、チラーと比較して圧倒的に少ない。個々の性能や条件にて異なるが、空冷式チラーのCOPは一般的に3〜5程度、最新の高効率モデルでも6〜8前後だが、霧による冷却システムはその数倍から数十倍の効率を得る場合もあり(当社試算比)、省エネに貢献しているといえる。
さらに、霧による冷却システムは、以下のような適用が可能だ。
これらを大規模な設備更新なしに、霧の力を用いて「後付け」で実現できる点も、費用対効果の観点から大きなメリットになる。
工場における省エネは、照明のLED化やモーターのインバーター化など、乾いた雑巾を絞るような段階に入っている。しかし、冷却の分野には、まだ「潜熱」という開拓途上の領域がある。そこで注目されるのが、風を当てるだけの顕熱冷却から、相変化を利用した潜熱冷却への転換だ。
この転換により、工場のエネルギーコストを下げ、CO2排出量を削減し、かつ夏の過酷な環境下での安定操業をもたらすことができる。いけうちは、単にノズルを売っているのではない。水という物質が持つポテンシャルを極限まで引き出し、熱問題へのソリューションを提供している開拓者である。だからこそ、いけうちは「霧のいけうち」と呼ばれ、多くの工場で信頼されている。
次回の記事では、この理論をエアフィンクーラーやエアコンの室外機などの工場設備に応用した、具体的なソリューションにつき、現場の事例を交えて解説する。