技術情報

[事例]特装車の塗装前処理工程|厚幅扇形ノズルで打力と脱脂性能を強化、多様な車体サイズ・形状にも対応

この事例で使われている
ソリューション・製品

導入の決め手

ノズル数や噴霧量を増やさずに打力を高め、効果的な脱脂を実現できたことに加え、幅広い流量調整範囲を持つスプレーノズルを提案できた点。

お客様の課題

特装車工場の塗装設備を請け負ったエンジニアリング会社から、ある日当社にご相談が寄せられました。
特装車とは、ダンプカーやタンクローリーなど特定の用途に合わせて製造される専用車両のことで、一般車両に比べ形状やサイズが多岐にわたり、塗装工程にも特有の課題が生じます。


特装車の一例


上塗り工程

今回のご相談は、塗装前処理工程で使用するノズルについてでした。塗装前処理は、湯洗からアルカリ脱脂、リンスを経て電着槽へ送る一連の流れであり、その後の中塗り・上塗りの品質を大きく左右する重要な工程です。特にアルカリ脱脂は、ワーク表面に付着した油分やゴミなどの異物を除去し、塗料の密着性を高める役割があります。

この工程用に設計された前処理設備では充円錐ノズルの採用が予定されていましたが、テストの結果、スプレーの当たり(打力)が弱くアルカリ液が十分に届かない箇所が残ることが判明。そのため、脱脂不足によって塗装後の剥がれが発生する恐れがあることが確認されました。

カバー範囲を広げるには本来ノズル数を増やしたいところでしたが、そのためにはポンプの吐出量を上げる必要があります。しかし現行設計に基づく吐出量のポンプはすでに手配済みで、仕様変更は不可能でした。さらに特装車はサイズや形状が多様であるため、幅広い流量調整が可能なノズルが欲しいというエンドユーザーからの要望も新たに加わり、お客様は対応策を見いだせず途方に暮れていました。

いけうちからのご提案

ノズル数も噴霧量も増やせない。それでもスプレーの打力は強めたい、さらに幅広い流量調整も必要――一見すると無理難題にも思えるこの課題に対し、当社エンジニアはすぐに解決の糸口を示し、お客様の不安を払拭しました。

提案したのは、従来の充円錐ノズルに替えて、同じ流量でスプレーが幅方向に115°、厚み方向に60°の扇形に広がる「厚幅扇形ノズル DDRP」を使用する方法です。

充円錐ノズルが75°の角度で丸型に噴霧するのに対し、DDRPは細長い長方形でワークに当たるため、同等の流量でもより強い打力が得られます。さらにスプレー粒子径は平均460μmと充円錐の3/4以下で、より密度の高い霧状のアルカリ液を噴射することで効率的な洗浄を可能にします。

加えて、噴霧圧力を変えることでDDRPの流量は最大3倍まで調整でき、多様な車体サイズや形状にも柔軟に対応できます。


左:充円錐ノズル|噴霧量27L/min、広がり角75°、丸型スプレー、平均粒子径630μm
右:厚幅扇形ノズルDDRP:噴霧量26L/min、広がり角115°×60°、細長長方形スプレー、平均粒子径460μm

導入効果

お客様に同行してエンドユーザー工場で現場テストを行った結果、洗浄残りによる脱脂不足が解消されることが確認されました。エンドユーザー・お客様双方から感謝の声をいただき、塗装前処理設備も無事に稼働を開始できる見通しとなりました。

現在も、多様な車体サイズや形状に対応し、安定した前処理が行われているとのことです。


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