事例紹介・技術情報

水噴霧式の排ガス冷却塔の最適設計

1.背景

廃棄物の焼却炉、溶融炉の排ガスや鉄鋼の各工程から発生する排ガスなど、一般に数百度以上の高温の排ガスを後段の集塵装置の耐熱温度である250~300℃まで冷却するニーズは従前からあった。近年ではそのニーズはさらに進んでいる。

ガス冷却塔の後段に設置する集塵装置の高性能化のために、電気集塵機よりもバグフィルターが設置されるケースが多くなった。
バグフィルターに変更することで、集塵効率および塩化水素、硫化水素などの酸性ガス、ダイオキシン類の除去効率が向上するが、これらの性能を発揮するためにはバグフィルター入口の排ガスを以前よりも低温度である200℃程度以下まで冷却することが求められている。

排ガスの冷却手法としては熱交換式、気液接触式の二法が一般的である。
熱交換式は廃熱ボイラーが広く知られており、熱回収により熱利用や発電などを行うことが出来る。気液接触方式は充填塔式と水噴霧式に分かれるが、ここでは水噴霧式について説明する。

水噴霧による排ガス冷却は湿式法、乾式法に大きく二分される。
湿式法はスクラバーなどと呼ばれ、洗浄液を噴霧し完全蒸発させずに溜水槽に有害物質などを吸収させるものである。一方乾式法は排ガス中で完全蒸発させるため、ドレンを発生させないため排水処理の必要が無い。目的により使い分けるが、乾式法は噴霧水量も湿式法よりも少なくなるなどの利点がある。
しかしながら200℃程度以下の低温度域までノンドレンで冷却するためには、塔のコンパクト化や水粒子の完全蒸発、ダストの堆積・付着、壁面腐食などに課題が残されていた。ノズルの開発・計測および風洞実験およびシミュレーションを中心とした流れの最適化を行う手法を開発したので、得られた知見について報告する。

2. 水噴霧式ガス冷却塔の需要

熱交換式にてボイラーにより熱回収する方式の場合、地球環境保全の面で意義が大きく、例えばごみ焼却炉からの排ガスでタービンを動かすごみ発電は、温室効果ガス削減において大きな位置を占めている。
一方でボイラーを適用できない事例もある。例えば非常に腐食性の高い排ガスの場合は、ボイラー水管の損傷が激しくなり水管の交換費用などが大きくなる傾向にある。あるいは排ガス中に低沸点金属が浮遊している場合にも、水管表面での塩成分の析出により閉塞が起こり安定的な運転が出来ないなどの問題をおこす場合がある。また排ガス量が少ない場合や排ガスの発生量が著しく変動する場合などは、発電には適さない。

以上のように、ボイラーによる熱回収が工業的に適さないケースが比較的多く存在する。そうした場合に気液接触方式が用いられるが、中でも排ガス中に水を噴霧し蒸発潜熱により排ガス温度を冷却する方式は、他方式に比べて安価で設置スペースが小さいなどの利点がある。

水噴霧による排ガス冷却方式に湿式法、乾式法があることは前述の通りである。湿式法は、排ガス中の有害物質などを水洗する必要のある場合に用いられることが多い。ただし洗煙排水の処理として水処理装置や汚泥処理装置が必要になる。

一方乾式法は、排ガスの必要冷却負荷と蒸発潜熱が同等になるように噴霧水量を決定するため、冷却塔出口までに完全蒸発する。洗煙排水が発生しないため、処理装置が不要になる。また湿式法のように装置壁面が濡れないため、壁面腐食対策を軽減できる。
乾式法では、一般的には排ガス中の有害物質の除去能力は低いが、噴霧水中に薬剤を添加する方法がある。また、乾式法は後段の集塵機とセットで設置されることが多く、有害物質が乾灰として回収されるためハンドリングが容易な特性がある。

3. 乾式法の設計手順

水噴霧による排ガス冷却のうち、乾式法を設計するとして以下に説明する。

3.1 初期計画の策定
冷却前の排ガス条件および冷却後の排ガス条件(以下、それぞれ入口排ガス/出口排ガスと称す)が決まっていれば、必要噴霧水量を算出できる。
噴霧水量は入口のガス保熱量と出口のガス保熱量の差を噴霧水のエンタルピー(蒸発潜熱+顕熱)で割ることで求める。ここで1流体ノズルを用いる場合と、2流体ノズルを用いる場合で噴霧水量が異なる。2流体ノズルの場合は圧縮空気を噴霧するため、空気による希釈冷却効果が加わるためである。


表1 ガス冷却塔の基本設計用必要項目

次に塔容積の決定であるが、噴霧水の水量および粒子径が完全に蒸発できる空間を求める。
実際の設計では様々な要素が絡むが、簡単化のためノズルの仕様は決定されているとして、塔容積を決定方法の一例を以下に紹介する。

ノズルの仕様は以下とする。

・噴霧水量 X kg/h
・ノズル本数 Y 本
・ザウダー平均粒子径 D32 μm
・最大粒子径 Dmax μm

液滴の蒸発時間の算出は以下の経験式にて行う。
最大粒子径および平均粒子径の蒸発時間を求める。ノズルからの水粒子は粒度分布を持つが、最大粒子径の蒸発時間が最も長いため、最大粒子径の蒸発時間を求める事が重要である。

・t : 噴霧水の蒸発所要時間
・D : 噴霧水の粒子径
・θ1 : 入口ガス温度
・θ2 : 出口ガス温度
・θb : 圧力1kg/cm2G における水の沸点
・Qo : 沸点 100℃における水の気化熱
・λ : 水噴霧前のガスの熱伝導率
・λm : 水噴霧後のガスの熱伝導率
・θg : 入口/出口の対数平均温度
・Cps : 蒸気の定圧比熱
・A~C: 常数

次に塔容積を決定するが、まず塔径を決定する。
塔径は平均ガス流速の経験的に求めた基準値を用いる。塔高の決定は、上記で求めた蒸発時間に平均ガス速度を乗じて求める。求めた高さに、ノズルごとに固有の初速減衰して排ガスと同じ速度になるまでの高さおよび安全率を考慮して決定する。
以上により、冷却塔の容量は決定されるが、実際の設計では敷地面積や建屋高さなど塔径や塔高の制約条件があるため、それらを考慮して決定することになる。

3.2 入口/出口形状およびノズルレイアウトの決定
塔容積は上述のように簡易計算にて一義的には決定できる。しかしながら高性能の冷却塔の設計で重要なのは、塔のコンパクト化や水粒子の完全蒸発、ダストの堆積・付着、壁面腐食などの課題をクリアーすることである。
入口/出口形状およびノズルレイアウトが最適化されていないと、蒸発空間が有効に使われなくなり塔容積が上記計算の5割増ほど必要になる場合も起こる。また水粒子が壁面に付着する事による様々なトラブル要因になる。
入口/出口形状およびノズルレイアウトは様々な設計要因により決まるため、標準的なものを記述することは容易ではない。

次章では、比較的オーソドックスな入口形状について、検証のためのシミュレーション結果を示す。

3.3 シミュレーションによる確認
熱流体解析ソフトを用いたシミュレーション手順は、冷却塔のモデル化、ノズルのモデル化およびそれぞれの実験値との検証などの事前準備が必要である。
冷却塔のモデル化は、計算格子の種類や数などを、実験と比して実現象の再現性を確保できかつ計算時間が膨大にならないポイントを決定する。設計用のシミュレーションでは三次元形状を作成し、メッシュ(計算格子)を貼り付ける。形状には境界条件を指定し、排ガス流れの計算を行い、入口からの流れの整流状態などを観察し、形状の設計変更の必要があるかどうかの確認を行い、必要に応じて形状の変更を行う。
ノズルのモデル化はノズル種毎に、レーザードップラー粒子径測定機(PDPA)などによる粒度分布、流量分布および速度などの実測値を用いて解析用のモデルを作成する。
モデリングをおこない再現性が確認できたノズルは、上記流れの計算と練成させて蒸発および冷却計算を行う(解析の詳細は割愛する)。


図1 ノズルのモデリング(2流体ノズル)

一例として検証事例を示す。図2に形状の概念を示す。
このケースでは前段の装置の出口との位置関係および含塵量が多いことから、ダスト体積防止のためダクトの傾斜を大きくとる必要があり、入口ダクトが山方の形状になっている。
塔本体は、排ガスは上部から下部に流れる下降流で、ノズルは本体の上部に設置される。ここで、流れは、塔本体のノズル噴霧高さではできるだけ整流されていることがのぞましい。


図2 検証事例の形状
 

図3に表面メッシュ(計算格子)を示す。
六面体格子でノズル位置での流れを再現するために入口部分を前段の装置出口として形状を作成した(図3)。


図3 形状の表面メッシュ(計算格子)

排ガス流れの計算結果を示す(図4)。


図4 排ガス流れのベクトル

図5
に横軸を塔中心からの位置、縦軸を流速(下方向がマイナス)としたグラフを以下に示す。


図5 排ガス流速のグラフ

流れが外側に傾いているのが確認できる。また、壁面近くは逆流が生じている。
排ガス流れは最適状態ではないが、設計制約上、このようなケースは多い。ここでは、ノズルレイアウトによる最適化を目指す。ノズルレイアウト案1による粒子の軌跡および温度分布を示す(図6、7)。


図6 水粒子の軌跡(ノズルレイアウト案1)


図7 温度分布(ノズルレイアウト案1)

ノズルレイアウト案1でも壁面への付着は発生していないが、壁面への距離が近い箇所があるため、ノズルレイアウト案2では、ノズルからの流れを利用して整流する方式とした。レイアウト案2の粒子の軌跡を示す(図8)。


図8 水粒子の軌跡(ノズルレイアウト案2)

4. 噴霧ノズルの開発

4.1 ガス冷却塔における噴霧ノズルの重要性能
冷却塔において、水噴霧ノズルの性能が装置全体の重要ポイントの一つになっている。従来から粒子径は重要な指標としての認識は高いが、一般的には粒子径は平均粒子径として評価されることが多かった。しかし冷却塔の蒸発を考える場合には、平均粒子径だけでなく粒度分布での把握が不可欠である。ノズルからの水粒子の粒度分布の実測値を図9に示す。


図9 粒度分布の一例

また、ガス温度が低いほど水粒子と蒸発時間の相関関係が大きくなる(図10)。
最大粒子径の小さなノズルを開発することがポイントとなっている。


図10 水粒子の粒子径と蒸発時間の関係

粒子径以外の重要な性能として、スプレーパターンがあり、噴霧の形状として円錐状、扇状などがある。ガス冷却塔では、円錐状のものが一般的であるが、円錐状でも空円錘、充円錐があり、それぞれに単式と多式がある。これらのスプレーパターンを定量化する指標として、スプレーの距離と広がりの関係や、流量分布の実測値などがある。
上記のシミュレーションにおける噴霧ノズルのモデル化では、粒度分布は噴霧角度、吹き出し速度などを実測して使用し、実測値と検証してモデルの精度を高めている。

4.2 噴霧ノズルの計測
液体粒子径の計測は難しい。ノズルから噴霧される水粒子数は非常に多く、かつ高速で異動していることが多い上に粒子径も様々で、形も真球状になっていない場合もある。
計測方法はさまざまな方法あり、捕集法である液浸法や非接触法であるレーザー法、画像法などがあげられる。それぞれの計測法で、長所と短所があり、液体水粒子の粒子径の絶対値を求める方法は無い。ガス冷却塔に用いられるノズルは、レーザドップラー法で計測されることが多い。
レーザドップラー法では、瞬時に多くの粒子を個別に測定することが可能なため、粒度分布に安定性があり、速度も同時に計測が可能である。ただし、スプレーはそれ自体が光学法における計測の障害物にもなるため、レーザー光の設定などによって測定結果が異なる場合もあり、計測の熟練が必要である。

4.3 噴霧ノズルの最適化
乾式法で使用されるノズルは、水を高圧化して微粒化する1流体ノズルおよび圧縮空気によるアシストを得て微粒化する2流体ノズルがある。
一般的には2流体ノズルの方がより微粒化するが、圧縮空気のコストの問題があり圧縮空気の使用量を低減することが求められている。
単位水噴霧量あたりの圧縮空気量は気液体積比と呼ばれるが、気液体積比 0.8~0.12 程度で最大粒子径 150μm 以下を達成することが一つの開発指標である。
開発の過程で通常は金属製の水噴霧ノズルをアクリルで製作し、内部の流れを可視化しつつ開発を進めることもある(図11)。


図11 可視化用アクリル製ノズル

5. 制御システム

入口排ガス条件は時間変動するため、各時間帯の水噴霧を最適化する必要がある。
2流体ノズルの場合圧縮空気が必要になるが、噴霧水量に応じた一定比率の圧縮空気量が噴霧することで、噴霧性能を損なわずに圧縮空気量を低減することが出来る。
図12は薬品混入する場合の噴霧水および圧縮空気のフローである。
薬品は排ガス中の酸性成分を中和するために噴霧しており、除去効率を高めるためには噴霧方法も重要であるが、本報では割愛する。
噴霧水量は出口温度により PID 制御をおこない、薬品混入量はバグフィルター出口の酸性ガス濃度により PID 制御される。

6.まとめ

今回は排ガス冷却塔の基本手順のみを記載し、風洞実験による検証方法や詳細設計で必要となる機械的な要素は割愛した。
排ガス冷却塔の成否の主要因は基本設計である場合がほとんどである。排ガス冷却塔の高性能化は排ガス処理全体中でキーポイントになりつつあると同時にトラブル回避など基本事項のクリアーも不可欠である。今後はさらに高性能化を進めることで、産業界に新製品を提供していく予定である。


図12 噴霧水および圧縮空気のフロー

<主な参考文献>
1) 中井志郎,水野毅男ほか:第13回微粒化シンポジウム講演論文集,液体微粒化用三流体ノズルの開発,p.99~
104(2004)
2) Claus E. Weinell and Peter I. Jensen Hydrogen Chloride Reaction with Lime and Limestone: Kinetics and
Sorption Capacity, Ind. Eng. Chem. Res, vol. 31, p164.(1992).
3) 森田,中井ほか:第19回全国都市清掃研究発表会講演論文集 pp217-219(1998)

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