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ガスタービン吸気冷却システム|夏場の出力向上・電力安定供給を実現

ガスタービン吸気冷却システム
夏場の出力向上・電力安定供給を実現

霧のいけうちは、70年以上にわたりスプレーノズル技術の研究・開発に取り組み、多様な産業分野で課題解決に貢献してきました。その中でも特に重要な技術の一つが、ガスタービン吸気冷却システムです。この技術は、吸気温度を下げることで、夏場のタービン効率低下を防ぎ、安定した電力供給を支える役割を果たします。

本記事では、このシステムの概要とメリットについて詳しく解説します。

1. ガスタービン吸気冷却システムとは?

ガスタービンは外気を吸い込んで発電を行います。しかし、夏場の高温環境では空気が膨張し、密度が低下します。その結果、吸気される空気の質量が減少し、発電に必要な燃料供給も減少します。これにより、発電出力が低下します。外気温が1℃上昇するだけで、発電出力は約0.6~0.8%低下するとされています。

ガスタービンの吸気を冷却し、空気の密度を高めることで、より多くの空気を取り込ませ、出力低下を防ぐ技術が「ガスタービン吸気冷却」です。

2. ガスタービン吸気冷却の方式

吸気を冷却する方法には、エバポレーティブクーラー方式、チラー方式、そしてフォグ方式があります。

エバポレーティブクーラー方式は、水を蒸発させることで空気を冷却する手法で、比較的シンプルで低コストですが、高湿度環境では冷却効果が限定的です。

チラー方式は、冷媒を使用して空気を冷却するため、より大きな冷却効果が期待できますが、初期投資が高く、また既存のガスタービンへの後付け設置が困難です。

スプレーノズル専業メーカーであるいけうちが提供するガスタービン吸気冷却システムは、水噴霧による冷却を行う、経済性に優れたフォグ方式を採用しています。いけうちのフォグ方式では、平均粒子径10~30μmの微細な霧「セミドライフォグ®」を噴霧し、その気化熱で吸気を冷却します。これにより、空気の密度が高まり、発電効率が向上します。

3. フォグ方式(水噴霧)3つのタイプ

フォグ方式のシステムには、以下の3つのタイプがあります。いけうちは、お客様のご要望や設備仕様、そして現場の環境に合わせて、最適なタイプを選定し、システムを設計・ご提案します。

  • • 外噴き: 吸気フィルター外で噴霧
  • • 内噴き: 吸気ダクト内で噴霧
  • • ウェットコンプレッション: 圧縮機への噴き込み

4. ガスタービン吸気冷却システムの構成

いけうちのガスタービン吸気冷却システムは、以下の4つの主要な要素で構成されています。

スプレーノズルヘッダー

「セミドライフォグ®」を噴霧し、その気化熱で吸気を冷却することで、空気密度と質量を増加させます。
高圧ポンプユニット

セミドライフォグ噴霧に必要な高圧水をノズルに供給します。
温湿度センサー

吸気温度と湿度をリアルタイムで測定し、そのデータを制御パネルに送信します。
制御パネル

吸気温度や湿度の変化に応じて、噴霧量を最適に調整し、システムの自動運転を実現します。

5. 吸気冷却用従来型ノズル

従来型ノズルの課題

  • • 最大限の噴霧が不要な場合、噴霧量を減らすにはスプレー圧力を下げる必要がありました。
  • • しかし、圧力を下げると、粗大で蒸発しない水滴が発生してしまいます。
  • • そのため、噴霧量はスプレーヘッダー単位でオン・オフを切り替えることでしか調整できません。例えば、噴霧量を半分にするには、半数のヘッダーを停止させる必要がありました。
  • • これにより、同じ冷却面に噴霧されている箇所とされていない箇所が混在し、冷却ムラが発生していました。

6. 吸気冷却専用ノズル

これらの課題を解決するために、いけうちは独自の吸気冷却専用ノズルを開発しました。

その主な特徴と利点は次の通りです。

  • • 全てのヘッダーにおいてスプレー圧を一定に保ちながら、噴霧量を1:10の範囲で調整できるため、冷却面全体にわたり均一な冷却を実現します。
  • • スプレー圧を下げる必要がないため、粒子径が大きくならず、効率的な冷却が可能です。
  • • システムはPID制御を行いながら自動で運転し、吸気の温度や湿度の変化に応じて最適な噴霧量に調整するため、水の節約にもつながります。

7. いけうちを選ぶ理由

  • • 外噴き、内噴き、ウェットコンプレッションのいずれにも対応可能です。お客様の設備仕様や現場環境に合わせて最適なシステムをご提案いたします。
  • • CFD解析により3Dモデルを作成し、システム性能をシミュレーションし最適化します。

  • • 他の吸気冷却方式に比べて、比較的安価な投資で済み、メンテナンスも軽微です。
  • • 外噴きタイプのシステムは、運転中であっても既存のガスタービンに追加設置が可能です。

8. 冷却効果の実証結果

中東の高温環境において、いけうちのシステムを使用した結果、吸気温度が15℃低下しました。

その結果、ガスタービンの出力が約10%向上し、77.3 MWから85.4 MWへと増加しました。

9. 導入実例

いけうちのガスタービン吸気冷却システムは、さまざまな地域で導入され、効果を発揮しています。以下にいくつかの導入実例をご紹介します。

いけうちのガスタービン吸気冷却システムを導入することで、真夏のピーク時でも安定した効率的な電力供給が可能になります。ぜひお問い合わせください。季節を問わず、安定した運転を実現しましょう。

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