[インタビュー]フィリップファーム(競走馬)|北海道厩舎での夏季育成と休養に、ミスト導入で夏バテゼロに
[インタビュー]ノーザンファームしがらき(競走馬)|厩舎ミスト冷房で熱中症予防と呼吸器症状の対策に貢献


ユーザー紹介
インタビュー:ノーザンファーム獣医師 鶴町 貴史 様
この事例で使われている
ソリューション・製品
熱中症の予防や呼吸器の症状が出にくくなるなど貢献している。
暑さから馬を守るために
ここ信楽町は関西で最も冷涼な土地です。しかし昨今の温暖化に より35℃を超える日も珍しくなくなってきました。北海道の涼しい 環境で育った馬たちにとって、この気温差によるストレスは相当に 大きく、暑さによる負担は想像以上のものです。
ここでは以前から廐舎の暑さ対策として、扇風機や換気設備、ミスト冷房、遮熱塗料などを導入してきました。暑さ対策をしっかりと行い、馬が夏バテしたり熱中症になってしまわないよう予防することで、レースの結果にも良い影響を与えていると考えています。
ミスト冷房の効果
開場以来さまざまな暑さ対策を行いましたが、ミスト冷房としては廐舎内 の各馬房に直接配管を通すシステムを採用しています。扇風機タイプのミ ストも候補でしたが、設置位置によって冷房効果にムラが出るため、全頭 を均等に冷やせるよう馬房に配管で設置する方法が最適だと思います。
ミストを導入してみると、廐舎内の温度は1~2℃下がりました。また扇風機 を設置して廐舎内の空気を換気させているので、湿度が高くてジメっとす るようなこともありません。ミスト以外にも暑さ対策をしているので一概 に言えませんが、熱中症の予防に少なからず貢献していると思います。ま た馬房の藁が少し湿ることで、滑りにくくなるという効果もありそうです。

ミスト冷房に対する馬たちの反応
北海道からやって来て初めてミストを目にする、体験する馬はやは り最初ビックリしていますが、それで怪我をしたりという事はない ですね。またビックリするのは最初だけで、すぐに慣れてくれます。
一旦慣れてしまうと、あまり気にしなくなります。システム稼働時にはミストがふわーっと出てくる所やシューっという音に驚くものの、噴霧・停止のサイクルが続くとすぐに落ち着く感じですね。
馬によって個体差はありますが、夏の暑い日にはミストの下で気持ちよさそうにじーっとしている姿がよく見られますよ。
各馬房でムラなく均等に温度が低下。ミスト噴霧にもすぐに慣れ、皆リラックスしている ▲
夏バテするとコンディションに影響
夏バテすると、息の入りが悪くなったり(運動した後にぜーぜー言ってしまう)、悪化してくると筋肉疲労という形に出て、そして一気に全体の筋肉量が落ちてしまう、という事が起こります。
また飼葉の食いも悪くなり(食欲が落ちる)、熱中症的な症状が出て体温が上がるということは多々あります。ただ、うちでは暑熱対策に力を入れているので、近年の気温上昇の割にそういった熱中症の症状が出る馬というのはとても少なく抑えられています。
ただし今夏は特に暑かったため、暑くなる前と残暑の時期に影響が出てしまう馬が何頭か出ました。北海道から移動してくる馬に関しては、どうしても気温差が大きいため影響が出やすくなります。
今後は北海道でも冷房が必要に
ただ北海道も近年は温暖化により暑くなっており、今後暑熱対策は必要になってくるのではないかと思います。これまで涼しかったので民家でさえエアコンがないという所も多く、馬の暑さ対策の経験値も本州と比べて圧倒的に少ないです。
北海道の廐舎でも、ミストやエアコンなどの冷房が必要な状況になってきていると思います。ただ、ミストは冬季凍結の課題があるので、配管の水を抜くなどの対策もセットで必要だと思います。
本州の廐舎ではこれまでの暑さに対する経験がノウハウとして蓄積されている ▲

暑熱順化への配慮
気温15℃が適温と言われる競走馬ですが、レース本番は暑い時間帯の屋外なので、廐舎の中だけ涼しすぎるというのも良くはありません。夏の暑い期間を涼しく快適に過ごさせつつ、日中に行われるレース本番に向け徐々に暑さにも慣らしていかないといけません。
その点、ミスト冷房やミストファンというのは外気とエアコンの中間ぐらいのイメージなので、冷やし過ぎることがなく廐舎の温度調整の方法としては適切なのではないかと思います。
ミスト冷房は、暑さによる体調不調を緩和しながら暑熱順化が行えるバランスの良い方法▲
ミスト冷房への要望など
冷房効果は出ており、満足しています。要望を上げるとすると、夏だけでなく冬の期間にもミストを使いたいという所でしょうか。夏は冷やす用途に、冬は乾燥を防ぐ用途に使用できれば、そちらの方が嬉しいという方も沢山いると思います。
最近では他の牧場からも暑さ対策について問い合わせをいただくことが増えてきました。このノウハウが、日本の競馬界全体の発展につながれば嬉しいですね。