[インタビュー]ノーザンファームしがらき(競走馬)|厩舎ミスト冷房で熱中症予防と呼吸器症状の対策に貢献
[インタビュー]フィリップファーム(競走馬)|北海道厩舎での夏季育成と休養に、ミスト導入で夏バテゼロに


ユーザー紹介
インタビュー:フィリップファーム株式会社 代表取締役 山口 実範 様
この事例で使われている
ソリューション・製品
廐舎にミストが入っているなら、と休養馬を預けて頂くケースもありました。
競走馬になるために
うちで預かっている馬はみんな1歳の秋にやってきます。それまで生産牧場で放牧されてのびのび育った馬を、馴致といって人が乗れるように調教し競馬場でレースに出られるようにしています。
馬は警戒心が強く臆病なため、足に触れるように、洗えるように、鞍を付けられるように、人が乗れるように・・・と一から練習していきます。そして調教しながら身体を作っていって、2歳の初夏に函館や東京、新潟といった競馬場近くの外廐に輸送してまた練習、ゲート試験を受けて合格できれば晴れて新馬戦デビューというのが一般的ですね。
北海道でも深刻化する暑さ
さて、ご存じの通り最近は北海道も暑くなってしまって10年前、20年前とは夏の気温が明らかに違います。以前は『涼しい北海道』でしたがもう今はそうじゃなくなっていて、7月、8月は日中30℃を超えることもしばしばです。本州の方が思っているよりも暑いです。
これは育成の観点からしても色々と問題です。またそれだけでなく、本州での競走を終えてうちに休養に戻ってくる馬たちが、思ったより涼しさを感じられないという状況が出てきました。本州では多くの廐舎にもうすでにミストが入っていて、その分だけ涼しい環境なんですよね。
育成と休養、どちらにも重要という事でうちもミストを導入しました。

夏バテのサインを見逃すな
馬の夏バテって、実はパッとわかるので把握自体は簡単です。目の周りが黒くなっていたり、足が浮腫んだり。飼葉の食いも、いつも1日8㎏食べる馬が、4㎏ほどしか食べなくなる。全部、夏バテのサインなんです。
そして夏バテの症状が出始めると、次々と問題が連鎖していくんですよ。まず飼葉の食いが落ちるとその馬は秋ぐらいまで回復せず、その間は集中力も散漫になります。また体が熱くなると発汗量が増加して体のバランスが崩れ、コンディションが低下します。こういったことが毎日積み重なることで、調教の仕上がり具合にも大きく影響してくる訳です。
夏バテしている馬は見ればすぐにわかる、ミストを導入した今夏については1頭も出なかった ▲
輸送というもう一つの課題
うちで育てた馬はレースの前に外廐や競馬場に輸送するんですが、馬の輸送って人が考える以上にストレスが大きいんですよ。馬運車という専用車で移動させるだけでも、ストレスや発汗で大体20から30㎏も体重が落ちたりします。
レースに出走する時のキレキレの体重で送ると当然ダメで、輸送で減ってしまう分を見越して体重を増やした状態で送らないといけない。でも夏バテしているとそもそも食べてくれない。
ただ、レースのスケジュールもありますから、やや夏バテ気味程度でも送らないといけないことがある。そうすると輸送の負担と重なって、さらにコンディションが落ちてしまう。夏バテ気味の馬は本来なら外廐には送りたくないんですよ。
更にレースに出るためにはゲート試験に合格する必要があります。その馬がしっかりゲートに入れるのか?じっと待てるのか?バンっとゲートから出るのか?という所を見るんですが、ここでも夏バテを引きずっていると練習時に集中できないなど悪影響が出ます。
0からトップスピードまで持って行くので馬にとっても負担が大きく、馬体重も減ります。無事試験に合格すればそのままレースに出るんだけれど、合格しないとまた外廐に戻ることになる。そしてまた調整をして、ゲート試験を受けるというループになります。とにかく全員の負担が増えるので、何も良いことは無いです。
外気と比べて廐舎の中の気温はとても低く、夏も飼葉の食いは悪くならなかった ▲
ミスト導入がもたらした劇的な変化
ミストを導入してからは、状況が劇的に変わりました。わずか2~3℃の変化なんですが夏バテ気味の症状の馬は全く出なくなりましたね。よく食べるし、毛艶も良くなって。調教時もしっかり集中するし、輸送前提の体重でしっかり仕上げられますし。また嬉しいことに『ミストを入れているなら馬を預けたい』と馬主さんから声をかけて貰ったりもしてます。
たまに聞かれるのが『北海道なのにミストを入れると、本州に移動した時により暑く感じるんじゃないか』という質問です。生き物なので夏の暑さって慣れるものじゃないです。暑いと夏バテするのでむしろ、北海道でも適切な暑さ対策をすることが大事です。その時その場所でできる最善の暑さ対策をするのが、馬にとって一番いいと思います。
調教が終わって馬房に戻った後、ミストを浴びて気持ちよさそうに寝入ってしまう馬も多い▲

ミストでスタッフの負担も減りました
うちは夏の期間、競走馬がそれ程いないので、スタッフも比較的自由にできるんですが、夏バテの馬が出るとみんな休日返上で張り付いてその間ずっと胃がキリキリして大変です。ただ、今年の夏はミストのおかげで本当に大過なく過ごせて、私も仲の良い馬主さんに呼ばれて本州に行ったりとのんびりできました。
回りの育成牧場からもミストの見学や問い合わせが多く、みんな興味を持っていますね。これから導入する牧場増えると思いますよ。