サーバールームの湿度管理の必要性|湿度の影響と推奨基準、対策方法
サーバーは、社内で取り扱う多様なシステムやデータを保管する設備です。サーバーを保管する空間(サーバールーム)においては温度管理が重要視されがちですが、一方で、湿度環境がサーバーに与える影響も軽視できません。
今回は、サーバールームの湿度管理の重要性と室内環境を整える方法を解説します。
もし、サーバールームへの加湿器の導入についてご検討中であれば、株式会社いけうちにご相談ください。「空調による温湿度管理がうまくいかない」「加湿をしたいが結露が心配」など、サーバルームの空調設備で発生するさまざまな課題を解決いたします。
ドライフォグ加湿システムAirAKI(エアラキ)は2流体加湿器を用いて、ものに触れても濡れない霧(ドライフォグ)を省エネルギーで噴霧することができる業務用加湿器です。
より省エネ性能が高い、1流体加湿システムAirULM(エアウルム)は、比較的天井高さがある現場にお勧めです。
<目次>
1.サーバールームにおける湿度管理の重要性
2.サーバールームを持つ施設の空調システム
3.サーバールームの環境を整える方法
4.まとめ
1.サーバールームにおける湿度管理の重要性
サーバーの内部には、CPUなど多様な電子機器が搭載されているため、温度および湿度によって様々な影響を及ぼします。しかしながら、サーバールームの環境管理において湿度があまり注目されないケースも少なくありません。
本項では、サーバールームに適した湿度を確認し、湿度管理の重要性を紐解きます。
(1)サーバールームの適切な湿度は?
サーバールームの湿度管理には、ASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)が提唱するガイドラインが広く用いられています。ASHRAEガイドライン(2015年版)では、以下の様にICT機器の使用目的に応じたクラス分けがされています。
(備考)ICT機器:ITにコミュニケーションの要素を加えた機器
露点:大気中の水蒸気が水になる温度
相対湿度:空気中の含まれる水蒸気の割合
同ガイドラインは、各クラスにおいて大気中の温度(乾球温度)、相対湿度、露点に基づく許容範囲と推奨範囲がそれぞれ設けられています。サーバールームでは上記におけるデータセンターの基準(A1)が広く用いられています。
ASHRAEのDC推奨温湿度条件2015年度版ガイドラインによると、サーバーラックにおける推奨温度、推奨湿度は以下の通りです。
このように、サーバールームの環境は温度と並んで湿度の適正化が重要です。
【参考記事】湿度の単位や概要、性質については以下の記事でくわしく解説しています。
(2)湿度が高すぎると
サーバールーム内の湿度が高すぎると、サーバー内外部に結露を起こし、以下のような影響を及ぼす危険性があります。
①サーバー内部のショート
水には、電気が流れます。そのため、サーバー内の電子機器に水が含まれると、本来流れるべきではないルートに電気が流れ、機器を故障させる可能性があります。
また、結露が発生した後に機器を乾燥させたとしても、復旧後の安定した動作を担保できず、多くの部品を交換せざるを得ないケースも少なくありません。
②サビによる絶縁不良
ICT機器の端子部などに結露が残ると、サビを発生させる危険性があります。特に、導体のサビは電気の流れを阻害するため、必要以上に電力を消費したり、絶縁状態となりサーバーの動作不良を引き起こすケースも考えられます。
また、サビによる腐食は時間と共に進む性質を持つため、完全に除去することは困難を極めます。そのため、結露によるサビはサーバールームに甚大な影響を与える可能性があるでしょう。
このように、サーバーに結露が発生すると、データの状況や業務への影響、ひいてはコスト面でも甚大な影響を及ぼすことがわかります。そのため、サーバールームには適切な湿度管理が欠かせません。
(3)湿度が低すぎると
サーバールーム内の湿度が低すぎると、保有する電子が物体間で移動することで物体を帯電させ、サーバー内外部に静電気が発生しやすい状況をつくります。
上図のように空間内に適切な湿度(水分量)が保持されていれば静電気は水分を媒体として地面などへと放出される性質を持ちますが、空間が乾燥すると、放出に必要な水分量が足りず、物体の静電気を逃がせません。結果、静電気が帯電しやすい環境になり得ます。
静電気により、サーバー内の電子機器で以下のような現象が起こる可能性があります。
①静電気放電
静電気により帯電した物体は、地面などに比べて電位が高くなります。すると、2つの物体間で電圧が生じ、空気中を通って放電(静電気放電)されます。
サーバー内の電子機器で静電気放電が発生すると、一時的に大電流が流れ、過電圧による半導体の絶縁破壊や過電流による熱破壊に至るリスクがあります。
また、制御システムが静電気による電圧をノイズとして認識し、機器の誤動作を誘発する可能性もあります。
②異物の付着
静電気を帯びた物体は、お互いに引き合う力が働きます。
そのため、サーバーが静電気を帯びると、周囲のホコリやチリが付着しやすくなり、ショートを引き起こす危険性があります。
したがって、サーバールームでは乾燥を抑えて、静電気の発生しにくい環境を作る必要があるでしょう。
また、データセンターの湿度管理については以下の記事が参考になります。
2.サーバールームを持つ施設の空調システム
サーバールームを持つ施設には、中央熱源方式および個別熱源方式の空調システムが広く用いられています。また、上記の方式には仕組みの違いによって、環境が異なる点が特徴です。
本項では、サーバールームを持つ施設の空調システムとして、中央熱源方式と個別熱源方式について紹介します。
(1)中央熱源方式
中央熱源方式は、空調機と熱源機(ボイラーや冷凍機)を一部屋にまとめ、ダクトを通して各階および各部屋に行き渡らせるシステムです。大規模なスペースの空調管理に適しており、主に大型の医療施設や工場、中規模以上のビルに採用される傾向があります。
中央熱源方式には、以下の利点および欠点が存在します。
中央熱源方式は、ボイラーを用いた温水、もしくは冷凍機を用いた冷水で外気から取り込んだ空気温度を調整し、各スペースに均一な空気を送り込む仕組みです。運転に必要な設備が一か所に集中しているため、メンテナンスや保守点検の手間が少ない点も利点と言えます。
一方、1つの空調機で建物全体の空調をまかなうため、使用目的に応じた空調機の使い分けができず、温湿度環境の個別管理が難しいという弱点があります。
(2)個別熱源方式
個別熱源方式は、各スペース(もしくは、同等の用途で使うスペース)に個別の室外機を設置する空調方式です。そのため、住宅や小規模施設に採用されるケースが多い傾向があります。
個別熱源方式には、以下の利点および欠点が存在します。
上記のように、個別熱源方式はスペース毎の空調機によって個別空調が可能な点が利点です。例えば、業務を行うか否かによって空調設備の運転を選択でき、省エネにつながります。
一方、個別熱源方式ではスペース内の空気循環によって温度調節を行うため、湿度は温度調整の成り行きによって制御されています。そのため、加湿等の直接的な湿度管理はできません。
したがって、湿度を適切に管理するには、加湿器などの別の設備が必要となると言えるでしょう。
3.サーバールームの環境を整える方法
サーバールームの環境には、中央熱源および個別熱源のいずれの方式においても、熱源の生成および湿度調整が重要です。また、熱源の生成には省エネルギー化の観点から、外気を用いて行われる方式が広く用いられています。
本項では、サーバールームの環境を整える方法として、直接外気、間接外気および湿度管理を用いる空調システムについて解説します。
(1)直接外気を用いる
直接外気を用いる方法(直接外気冷房)は、サーバールームの温度が高い時に、冷たい外気を取り込んでICT機器を冷却する方法です。
直接外気冷房には、以下の利点および課題が存在します。
直接外気冷房は、外気を用いて空調を行うため、他の方式に比べて熱交換を行う設備(ボイラーや冷凍機など)の稼働を少なくできることが利点です。
一方で、立地の外気条件に左右される点が課題と言えます。例えば、工事現場やグラウンドなど粉塵が舞いやすい場所が近くでは、外気の取り込み口(もしくはダクト内)に粉塵を取り除く高性能なフィルターを用意する必要があります。
また、冬季などの乾燥した季節には、湿度調整を行える設備の用意が必要になるなど、通年を通した環境管理が難しい点も弱点です。
(2)間接外気を用いる
間接外気を用いる方法(間接外気冷房)は、熱交換器を用いて間接的にサーバールーム内の冷熱を調整する方法です。
上図の様に熱交換器(クーリングタワー)によって冷却された外気が、空調機に取り込まれた室内の空気に冷気(もしくは熱)を与え、温度調整を行います。
そのため、直接外気冷房と比べて、以下のような特徴があります。
間接外気冷房は、外気とサーバールーム内の空気を独立して用いるため、粉塵がサーバールームに取り込まれることはありません。加えて、室内の空気を循環させて空調を行うため、外気による湿度の影響が少ないことが利点です。
一方、夏場など外気温度が高い場合、空気を冷やすために必要な冷気が足りずサーバールーム内の温度を制御しきれないケースも少なくありません。
また、湿度に関しては温度制御に基づく二次的な制御となるため、直接的に湿度制御を行えない点も弱点と言えるでしょう。
(3)湿度管理を用いる
湿度管理を用いる方法は、湿度と温度の関係を積極的に利用する方法です。湿度(相対湿度)は、除湿すると温度が上昇し、加湿すると温度が下降する性質を持ちます。したがって、本方式では外気冷房のように温度から湿度を制御するのではなく、湿度から温度を制御する特徴があります。
湿度を用いた空調管理の利点および課題は以下の通りです。
サーバールームの環境管理に湿度制御を用いると、外気による依存性が少なくなるという利点があります。そのため、低湿度による静電気の影響や高湿度時に起こる結露の可能性を直接的に抑制できる点が特徴です。また、加湿により室温を下げる効果もあるため、ランニングコストの低い加湿システムを選べば省エネにつながります。
一方、湿度制御は空間内の水分量を制御する方法と言い換えることができ、特に加湿時には水分によるICT機器への影響が懸念され、導入する加湿システムは十分に配慮されたものである必要があります。
株式会社いけうちの産業空調加湿システムAirAKI®なら、濡れない霧である「ドライフォグ」を用いた加湿のため、サーバールームの湿度管理にぴったりです。
ドライフォグとは50μm以下の細霧で、物体に接触しても破裂せずに弾かれる性質を持ち、水分によるICT機器への破損の心配はありません。
引用:AirAKI | 製品 | フォグエンジニア霧のいけうち (dry-fog.com)
また、湿度を直接的に制御することで静電気によるトラブルを抑制でき、過電流・過電圧によるサーバー内部の破損やホコリやチリの付着による動作不良の低減に役立ちます。
さらに産業空調加湿システムAirAKI®は、蒸気による加湿に比べて電気および水道などの使用量を大幅に低減できます。ランニングコストも1流体加湿と比べると80%、2流体加湿と比べると70%のコストカットが見込めます。
このように、産業空調加湿システムAirAKI®はサーバールームに適した空調管理を低コストで行えるメリットがあると言えるでしょう。
ドライフォグはさまざまな産業で導入されています。詳しくは以下の動画も参考にしてください。
引用:【脱炭素】蒸気ボイラーから水噴霧式の加湿へ|ドライフォグ加湿システム導入事例インタビュー【株式会社三社電機製作所様】
引用:【静電気の発生を約70%抑制!】冬物の生地を扱う際のお悩み解消|ドライフォグ加湿システム 納入事例インタビュー【有木株式会社様】
4.まとめ
今回は、サーバールームにおける湿度管理の重要性から環境を整える方法までを解説しました。
湿度を用いてサーバールームの環境を調整すると、乾燥による静電気の発生や多湿による結露を直接的に抑制できます。
もし、サーバールームへの加湿器の導入についてご検討中であれば、株式会社いけうちにご相談ください。「空調による温湿度管理がうまくいかない」「加湿をしたいが結露が心配」など、サーバルームの空調設備で発生するさまざまな課題を解決いたします。
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